2025.02.26
こころの健康とケア⑧学習理論と行動分析~認知行動理論と認知療法

こんにちは
早良区 西新の歯医者 松尾です。
こころの健康とケア⑧になります。
学習理論と行動分析
■いいことがあるから繰り返す
人間を含めた動物がとる行動は、その行動をした結果、よいことがあったのか、なかったのかというこれまでの学習が基準になっています。
何かよいことがあるとその行動は増え、なければ減るように学習します。
このような学習のプロセスを細かく説明するのが学習理論です。
この理論に則って、適切な学習をし直すことで社会的に不利益な行動を変えようとするのが行動療法です。
周りの人が困る行動や、依存症や自傷などの本人の健康を損ねる行動でも、そこには、これまでの学習(理由)があるはずです。
すぐには理解しにくい行動でも
その人にとっては「今ここで一番よいと判断しているのかもしれない」と捉えます。
そして、行動が起きる背景や、行動が起きた結果を細かく分析(行動分析)すると、その人が何を学習したのかがわかってきます。
■よりよい行動に変える
行動障害があるときには、周りの人はついつい問題行動に注目してしまい、何とかその行動を起こさせないようにと気をつけ、ときには叱ってやめさせようとします。
しかし、それでうまくいかないときには「叱る」という行為が「注目してくれた」という結果を生み出して、ますます行動を長引かせいるとも考えられます(維持要因)。
たとえば作業がつまらないときに大声を出すと、周りから注目され、作業を中断でき、イライラの気分は減る、と学んだのかもしれません。このように行動を細かく分析して
その行動のきっかけとなる状況や、結果として周りの人がやってしまっていた対応を変えて、
別の行動を学習できるように工夫します。
認知行動理論と認知療法
■認知、行動、感情、身体の関係
人の気持ちやふるまいは「よくわからない」「予想できない」といわれます。
人それぞれ置かれた状況が違いますし、同じ状況でもいろいろな気持ちや考え方になるからです。
この複雑な状態を理解するために、人間の状態を
・考え(認知)
・ふるまい(行動)
・気持ち(感情)
・身体(身体反応)
の4つに分け、それぞれがお互いに影響すると考えるのが認知行動理論です。
脈拍や体温などの身体の状態や、怒りや不安などの感情は、自分の意思では変えられませんが、
考え方と行動はすぐに変えられます。
そこで、考え方を現実に合うように変えてみることで、気持ちを楽にして不安などの症状を軽くするのが
認知療法です。
さらに行動にも注目し、現実の状況に合わせて行動を工夫することで、症状や悩みを楽にしていくのが
認知行動療法です。
■精神科ケアでの応用
認知療法は精神科では、うつ病や不安障害などの治療や再発予防、健康維持に使われます。
たとえば、うつ病の人に応用する場合には、
「何かうまくいあないことがあるとすべって自分のせいだと考える」というパターンを「認知のゆがみ」と名づけて、陥りやすい考えのパターンを振り返ります。
次に、視点を変えて別の考え方をすると、気持ちや身体の症状はどう変わるかを調べてみます。
そして、症状を軽くするためにパランスのよい考え方ができるよう援助します。
認知行動療法では考え方の援助に加えて、日常生活でできる具体的な行動目標を立て、
実際に行動して気持ちや身体の状態がどう変わったかを確かめます。
実際の治療では、具体的な生活場面を想定して練習することもあります。
認知行動療法の手順
①自分の考え方のパターンに気づく
よくあるパターン
「べき」思考、「どうせ」思考、「そもそも」思考、結論を早まる
②そう考えたときの気持ちは?
自分の気持ちをわかりやすくするために
「不安すぎて生活できない」⇒不安100%
「生活をやっていけそう」⇒不安0%
という具合に、数字にする方法がある
「なんて自分はダメなんだ」と考えると⇒自信喪失100%
「次も失敗したらどうしよう」と考えると⇒自信喪失50%
といったように考えと気持ちの関係をはっきりさせる
④別の考えをしたときの気持ちは?
③の考え方を
「本当にそうなのかな」
「どれくらい本当なのかな」と確かめ、
「ほかの人だったらどうだろう」
「全く別の考え方は?」などと、いろいろな考えを出す
「今まではなんとかなった」と考える⇒不安30%
「失敗したら謝ったらいい」と考える⇒不安10%
など、考え方と気持ちの変化に注目する
⑤新しい考えを試す
気持ちが楽になる考え方を習慣づけるために
「3日間そう考えてみる」
といった小目標を立ててやってみて、考え方と気持ちの変化に注目する。
身体の状態や行動の変化にも気をつける
⑥振り返る
少しでも効果があったことを正しく評価し、より楽になる考え方を工夫する
認知のABC理論
心理学(有斐閣) 無藤 隆、森 敏昭、遠藤由美、玉瀬耕治 著
解釈を変える
本記事のテーマは、こころのケアが必要な方々に限ったことではなく、どなたにでも役立つ内容となっています。
認知のABC理論の「ある結果C」の原因を「ある出来事A」と考えがち、ここが重要です。
以前のブログ
「心理学②個人的無意識」↓にも書きましたが
https://matsuo-dentalclinic.net/blog/13331/
以下引用
思考のクセ、考え方のクセなどの色々な
「意味づけ」されたものが
どんどんどんどん潜在意識の底にたまっていくわけですね。
その蓄積した情報によって、自分の
・解釈(考え方)
・思考
・判断
・決断
・行動(ふるまい)
・習慣
へと繋がって行くのです。
つまり
その意味づけされたものが、その人の考え方や個性やキャラクターに影響を与えていきます。
引用終了
自分のせいだと思い込む
去年の秋ごろ
左手親指の付け根が痛くなる、CM関節症という外傷を負いました。
使いすぎと加齢が原因とのことでした。
わたしはコーヒーが好きで、ほぼ毎日近所のお店でコーヒーを買っていました。
しかし
コーヒーは、リウマチなどの関節炎を悪化させるという報告があり(CM関節症に対しては根拠不明とのデータもありますが)、止めてみないことにはわからないと思いしばらくコーヒー断ちをしていました。
ある程度痛みが快復したので、久しぶりにそのお店に行ったところ、
お店の方から
「お久しぶりです!どうかされてたんですか!?」
と聞かれたので、関節炎のためにコーヒーを控えていたと告げると
お店の方が申し訳なさそうな表情をし「すみませんでした」と言われたので驚きました。
わたしが自分の判断でコーヒーを買っていただけですし、お店の方には何の責任もないと思うからです。
つまり
こういったケースに置いても、「どう解釈するか」で変わってきます。
わたしの問題であって、お店の方には関係がない話ですが、他人事であっても
「自分に責任があるような気がする」
という考えが起きるということです。
こころのケアが必要な方に限ったことではないと言えます。
そして、次に「行動を変える」ことで、結果が変わってきます。
科学の基本に
「条件が変われば、結果が変わる」という原理原則があります。
つまり
考え方と行動=条件を変えれば、結果が変わるということです。
人のこころや感情の問題は、科学「だけ」では解決は難しいかもしれませんが
科学「なし」だと、解決はより困難なものになると思っています。
目にみえないものだからこそ、数値化したりビジュアル化したり、客観視することで、見えてくるものもあるのではないでしょうか
こころの健康とケア⑨へ続きます