2023.08.16
菌活(きんかつ)のすゝめ
こんにちは。
早良区西新の歯医者 松尾です。
今日は乳酸菌の有効活用法の話です。
乳酸菌の摂取の仕方やタイミングによって、身体のどこに効果的かが違ってくるので、その方法論について説明します。
口内目的の方法とタイミング
乳酸菌の種類にもよりますが、口内(虫歯や歯周病)に対して有効な方法から説明します。
これに関しては「虫歯予防」「歯周病予防」「歯医者がすすめる」などのうたい文句がある種類の乳酸菌であれば口内に有効です。
基本的に乳酸菌は口内に定着しづらいタイプの菌なので、大きな目的は
乳酸菌 VS 虫歯菌や歯周病菌
となるように、菌同士を戦わせることです。
乳酸菌がヒトにとって有害な虫歯菌や歯周病菌を減らしてくれます。
ただし
歯ブラシ、フロス、歯間ブラシなどを使い、口内ケアにより除菌をし、悪い菌を減らしたあとで、乳酸菌を摂取することがベストです。
口内ケアをせずに乳酸菌だけをとっても、悪い菌が減らないことがわかっています。
そして
睡眠時には唾液の分泌が減少するため、口内細菌は睡眠時に増える傾向があります。
唾液には*抗菌作用があるため、口内の細菌が増えることを抑えます。
そのため
寝る前にしっかりと口内ケアをし、乳酸菌を摂ることで悪い菌の繁殖を防ぐことに繋がります。
*抗菌作用(こうきんさよう)
菌などの微生物が住みにくい環境を作る事。
唾液に含まれる主な抗菌物質
・リゾチーム
・ペルオキシダーゼ
・ラクトフェリン
・ヒスタチン
・*分泌型IgA抗体
・ディフェンシン
分泌型IgAに関してはワクチンのブログでも書きましたが
再度載せておきます。
分泌型IgA:粘膜面の感染防御の主体。2量体~4量体。
*抗体はY字型をしており、ここで微生物をキャッチ・中和します。
その数が多い方が、ウイルス中和能や抗菌作用が高いです。
つまり中和能は 4量体>>>>>単量体 となります。
加えて
分泌型IgA抗体は、口内以外にも鼻粘膜、肺、小腸でも盛んに分泌され、粘膜において病原体を侵入部位で処理するのに重要な役割をはたしています。
腸内目的(菌活)の方法と
タイミング
菌活とは、腸内にキノコや善玉菌などの菌類を摂り入れることで腸内環境を整えることを指します。
腸へ乳酸菌を届かせるためには
「空腹時に飲む」ことが重要になります。
生体で「胃酸が最強」と言われる理由は、その消化力にあります。
胃に食べ物(固形物)が入ると、胃の周辺筋肉が収縮し、雑巾しぼりのような動きをし、消化酵素を出しながら食べ物を消化していく「蠕動運動(ぜんどううんどう)」という運動が生じます。
そして
食べものが粥状(じゅくじょう=おかゆ状態)になって、少しずつ十二指腸へと運ばれます。
一般的に食べ物が十二指腸へ運ばれ、胃が空になるまで約4時間はかかると言われています。
この時、下図のように幽門(ゆうもん=胃下部の出口)は閉じて、一旦食べ物を胃下部へ留めます。
留まっている間に胃酸が分泌され、徐々に食べ物が消化されていきます。
食後に乳酸菌を摂取した場合、長く胃下部に乳酸菌が留まるため、胃酸によって溶けてしまいます。
つまり
胃下部に長く留まるほど、胃酸にさらされて乳酸菌が死んでしまうので、生きた菌が腸へ届きません。
しかし
「液体」は、比較的早く十二指腸へ運ばれるため、胃が空の状態で乳酸菌を摂ると、胃酸の影響を最小限に抑えることができます。
※
乳酸菌を摂って、一口程度の水を飲むとよりスムーズに十二指腸へ流れていきやすいです。
生きた菌が腸に届くことの最大のメリットは、腸内フローラ(腸内細菌叢=ちょうないさいきんそう)のバランスが整うことです。
特に以前から紹介しているLロイテリ菌は「菌の指揮者」と呼ばれ、生体にとって良い腸内環境づくりを担うと考えられます。
*関連ブログ
菌活の重要性を痛感した出来事
先月
わたしと同時期に、仲間たちも乳酸菌の空腹時摂取を始めました。
特に顕著な変化を見せたケースをご紹介します。
普段はせっかちでカリカリしがちなタイプだったNさん(仮名)が、とても穏やかになり、わたしも周りも驚きでした。
「今までだったら絶対怒られてたはず」
「別人みたい」
「怖くない」
などの声があがっていました。
「腸脳相関
(ちょうのうそうかん)」
ですね。
生物にとって
重要な器官である脳と腸がお互いに密接に影響をしあうことを示す言葉です。
例えば多くの動物では、ストレスを感じるとお腹が痛くなり、便意をもよおします。
これは脳が自律神経を介して、腸にストレスの刺激を伝えるためです。
つまり
どのような細菌が住んでいるかによって
その人の性格にも影響が出ると考えられます。
「腸脳相関」に関連するエピソードをもう一つ。
以前観たテレビでの内容を思い出しました。
自称フルーツ啓蒙家の中野瑞樹さんという方の話です。
中野さんは、水すら飲まずフルーツのみで生活することを開始。
(塩分は必要なので、スイカの皮などを漬物にして食べてはいましたが)
人類の進化に寄与するかもしれない腸内環境になったと言われていました。
中野さんによると、果実食中心のためタンパク質の摂取が足りていない中野さんの腸内には、空気中の窒素をタンパク質に変える菌が確認され、大学の研究者が「一般の人と全く違う」と驚愕したというエピソードがあります。
同番組に何度も出演されていた中野さんをみていて思ったことがあります。
フルーツオンリーの生活を始めて8年くらい経過していましたが、どんどん草食系というか植物?のように穏やかになっていく姿がありました。
わたしの師匠が
「わたしたちは菌でできている。
菌によって生かされている」
というフレーズを口にしますが、まさにその通りだなと思いました。
ウイルスも人の役に立つ
「腸脳相関」に関しては「細菌」による、生物への影響ですが
実際は、わたしたち生き物は細菌に限らず、ウイルスやカビなどとも共生しているため、どのような微生物と共生するかでその人がどういう性格になるか、どのように進化するかまでも違ってくると言われています。
ウイルス学者の宮沢孝幸氏は
——京大おどきのウイルス学講義より引用——-
「ヒトの胎盤は*レトロウイルスによって生まれた」
「生物の進化に貢献してきたレトロウイルス」
「人はウイルスとともに暮らしている」
—————引用終了————–
と主張されています。
*レトロウイルス
RNAウイルス類の中で逆転写酵素を持つ種類の総称。
人にとって有害なウイルスもいますが、全体で見るとごく一部にすぎません。
同じ宮沢孝幸氏 監修の
———-ずかん ウイルスより引用—-—–
ウイルスはおそろしいだけのものではありません。
特定の宿主にしか感染しない性質や、遺伝子に直接はたらきかける性質をうまく使えば、人間の役に立てる事もできます。
・ガンの治療
・細菌感染症の治療
・食品の保存
・赤潮を解消
———-引用終了————-
などなど
まだまだ利用されていることはたくさんありますので、気になる方は
「ずかん ウイルス」を一読されることをオススメします。
他にも
東大の研究では「健康な人の体に39種類のウイルスがいる」と発表しています。
体内のウイルスが何をしているかは、わかっていない事が殆どのようです。
これからの研究次第ですが
「人間がわかっていることは、
ほんの一握りでしかない」
ということです。
まとめ
もちろん
食べるもによっても、腸内細菌の種類に変化が起こるため、適切な菌を摂りつつ、その菌たちが増える手助けをすることで、より良い腸内環境を作ることが可能になります。
・お腹の調子が良くない方
・何となく前向きになれない方
・イライラしがちな方
など
生きた菌を腸へ届ける「菌活」をされてみてはいかがでしょうか。
みなさまの健康を願っております。